令和3年度二級建築士・設計製図試験の思い出、あるいは一級建築士と二級建築士の製図を同時受験してみた記録

一級建築士の結果発表まであと2週間となりました。あいかわらず精神的にはまな板の上ですが、せっかく二級建築士に受かったので、二級の製図本試験のことをメモしておきます。ざっくり言うと、「一級製図の勉強だけしていたら二級製図に受かりました」という内容です。同時受験を検討している方の参考になれば幸いです。ちなみに令和3年の課題は「歯科診療所併用住宅(鉄筋コンクリート造)」でした。

もくじ
1.全体的なスケジュールと勉強内容
2.本試験当日のこと
3.一級のやり方で二級を戦えるか?
4.二級後に一級へ戻ってから困ったこと
5.まとめ

.全体的なスケジュールと勉強内容

2021年7月11日までは一級の学科、12日からは一級の製図に向けてガリ勉していたので、二級の製図のための勉強はほとんどしていません。

これまでのあらすじ

  • 2019年7月  二級建築士の学科試験を独学で初受験し合格。
  • 9月 二級建築士の製図試験を独学で初受験。
  • 12月 製図ランクⅢで不合格。製図の独学は厳しいと知る。翌年の二級製図課題も木造なので受験を見送ることにする。
  • 2020年1〜7月 一級建築士の学科試験を独学で初受験して落ちる。9月から総合資格に通学。

6月:出願して放置

  • 2021年1月31日 二級の製図の受験チャンスが今年までなのを思い出し、総合資格の学科の先生に一級二級の同時受験について相談する。結果、可能とお墨付きをいただいたので、二級建築士製図の角番受験を決意する。
  • 4月12日 センター様のサイトで受験申し込みをする。18500円&振込手数料370円。
  • 6月13日 センター様より今年の課題が発表される。「歯科診療所併用住宅(鉄筋コンクリート造)」。予想通りのRCだった良かった。木造だったら詰んでた。
  • 6月17日 受験票が発行される。

7-8月:一級の隙間に勉強

  • 7月16日(金曜日)  一級学科試験が終わって製図道具の準備も終わったので、二級のテキストだけでも買っておくかと思い、会社帰りに総合資格の「令和3年度版2級建築士試験設計製図課題集(※以降テキストと呼称)」を買う。3300円。二級はこれに載ってる5問だけで戦う予定。
  • 8月16日(月曜日) 地獄のような総合資格の一級製図夏休み特別講習を乗り越えたのでそろそろ二級もやってみるかと思い、課題④の読み取りをしてみたところ、二級も一級のやり方でいけそうな感じ。あと屋根部分の矩計をトレースしてみたら2年前の記憶が残ってたので、こちらもいけそう。
  • 8月17日(火曜日)  テキスト読む&中間階床の矩計トレースをする。
  • 8月18日(水曜日)  テキスト読む&課題④のエスキス。二級のエスキスに初めて取り組んでみるも難しくてやはり一級とは勝手が違う。てゆうか8月時点では一級のエスキスさえもおぼつかないのでそりゃそうだ。住宅は小さいからといって楽なわけではなかった。
  • 8月19日(木曜日)  エスキスは放置してテキストだけ読む。
  • 8月24日(火曜日)  テキスト読む。

試験一週間前:つめこみ学習

  • 9月7日(火曜日)  週末が二級の試験なので、いいかげん8月18日から放置していた課題④のエスキスに再挑戦する。難しい。
  • 9月9日(木曜日)  午後半休をとって課題③の製図(トレース)をする。パーツの寸法を覚える。ぜんぜんやる気が出ない。
  • 9月10日(金曜日)  午後半休をとって課題③の製図(トレース)の続きをする。ぜんぜんやる気が出ない。器出しと外構まわりが特に分かってないので課題①〜⑤の敷地と条件をノートに整理して、解答例にゾーニングの色塗りをするなどして住宅のセオリーを叩き込む。
半休を2回とったのにこれしかやらなかった
  • 9月11日(土曜日)  朝から解答例をエスキスでトレース。9時から18時半まで一級製図のエスキス強化講座①②に出席。夜にエスキス解答例トレースの続きと矩計図3種のトレース。

試験当日と翌日

  • 9月12日(日曜日)  製図本試験当日。5時半から矩計トレースして法規の復習。9時半に家を出て10時半に会場の座席到着。11時から16時まで試験。終わってから即帰宅してTwitterで傾斜敷地が大炎上してるのをチラ見しつつ20時から日建学院のYouTubeを見る。傾斜敷地の解法の解釈に唖然とする。これもう問われているのは日本語の読解力じゃん。しかし私は階段の防火区画忘れによるランクⅣの危機なので傾斜敷地はどうでもいいのであった。
  • 9月13日(月曜日)  防火区画描き漏れの事実に落ち込むも、仕事はあるし一級の宿題もあるしで二級のことは忘れる。

12月:合格発表

  • 12月2日(木曜日)  9時過ぎから会社のパソコンでセンター様のサイトを更新し続ける。9時半頃に合格発表ページが公開。一級の時ほど重くない。都道府県ページ開く。最後の方に私の番号を見つける。なんでこんな後ろやねん角番だからか納得。スマホの画面の受験票と照らしつつ番号再確認。合ってる。受かったっぽいけど半信半疑。とりあえず家族と先生に報告。昼前に総合資格の営業さんから連絡が来て建築士会の事務所に私の名前で掲示があったと聞く。どうやらほんとに受かったっぽい。
  • 12月3日(金曜日)  センター様から合格通知のハガキが届く。本当に受かってた。
  • 12月6日(月曜日)  都道府県から二級建築士登録についての封書が届く。二級建築士は都道府県知事の許可なんだなあと建築士法が正しいことを知る。
  • 登録するかどうかは一級の結果を見てから決めることにして現在に至る。

結局、二級のための勉強時間はトータルで10時間40分。

勉強内容は
A2図面を1枚だけトレース。
矩計は屋根、中間階床、基礎をそれぞれ3回トレース。
エスキスは通しでは一度もせず、解答例5題の分析だけしました。

今年かかった費用はトータルで22,170円でした。

.本試験当日のこと

二級建築士の設計製図試験は、5時間で住宅を設計して図面を提出するというものです。一級は6時間半なのでそれよりも1.5時間も短く、心理的にも肉体的にもハードルは低めです。

想定したタイムライン

テキストに載っていた手順を軸にしつつ、一級製図と同じ手順を想定していました。

  • 11:00 試験開始、課題文の読み取り(20分間)
  • 11:20 エスキス(40分間)
  • 12:00 中間チェック(10分間)
  • 12:10  計画の要点の下書き(20分間)
  • 12:30  製図(3時間)
    • 12:30  面積表(10分)
    • 12:40  計画の要点(10分)
    • 12:50  各階平面図(90分)
    • 14:20  断面図(25分)
    • 14:45  立面図(15分)
    • 15:00  詳細図つまり矩計図(30分)
  • 15:30 最終チェック(30分間)
  • 16:00 試験終了

実際の工程

もちろん想定通りにはいきませんでした。

  • 11:00 試験開始、課題文の読み取り。
一級短期っぽく塗られた課題文
  • 11:20 エスキス開始
    • 〜11:44  器出し&スパン割決定。ここが苦手で心配だったけれど、一面接道だし外部施設要求が多かったのですんなり決まった。
    • 〜12:18  1/200プランニング終了。ここまで特に悩まない。順調。なんか今年は簡単だなと思う。
プランニング
  • 12:18 中間チェックして製図板に作図用紙を貼って製図開始。まずは平面図から。
    • 〜12:31  通り芯、柱、寸法、面積表
    • 〜12:48  壁芯
    • 〜13:22  壁、建具。ここまで順調。
    • 断面を描こうとして傾斜敷地の罠にようやく気付く。今年の難しいポイントはここか!!!これ敷地が斜めだとFLはどこに設定すればいいの?とパニックになりかける。とりあえず断面は後回しにして書けるところを先に描いてしまうことにする。
    • 〜13:37  法規、外構等
    • 〜14:13  家具、文字を描いて平面図終わり。ここまではまあよい。
  • 14:13 後回しにした断面図を描き始める。斜面の段差処理については、まず敷地の南北断面を書いて勾配を把握。歯科医院と住宅それぞれ道路から玄関までの距離で高さを出し、そこを基準に1FLを決めた。医院と住宅は住戸内で200mm段差ができたので踏段をつけて繋ぐことにした。基礎はFL高い方のスラブをふかしてピットと底盤はフラットなベタ基礎にした。あと玄関までのスロープを決めて平面図に外構を書き込む。
エスキス用紙の隅にあった断面図の下書き。なんかやたらと刻んでるけど、今となっては根拠がわからない。
  • 15:06  断面図終わり。53分もかかった!あと1時間を切っているのにまだ図面が2面も残っている。ここから巻くしかない。立面図描き始め。
  • 15:17  立面図終わり、矩計図を描き始めたら、ここにも今年の難しポイントがあった。バルコニーってなんだよ鬼かよ。サッシってどう切るの??とはいえ1/200のバルコニーなら一級で毎週描いてるし、あれを10倍にして1/20にすりゃいいんだろと思って持てる知識(二級製図の屋根矩計と一級学科の施工のガラス工事、グレイジングチャンネルとかセッティングブロックとか)を全てかき集めてそれっぽく適当に描く。一級受けててよかった。
エスキス用紙の隅にあった矩計図の下書き。我がプランの2階はルーバルなのにこの時点で片持ちバルコニーに描き間違えてる。本試験でも間違えたまま描いてきた。
  • 15:40 図面終わり、計画の要点の記述書き始め。残り20分しかないので終わるかどうか紙一重だがここまできたら未完成でのランクⅣだけは避けたいという意地があるので、一級の知識をかき集めて適当にそれっぽく書く。
  • 15:55 記述終わり、残り5分だけ最終チェック。延焼ラインと丸防を見ていたら時間切れ。
  • 16:00  試験終了。5時間が一瞬である。結局トイレには行かなかった(時間がなくて行けなかった&行きたくもなかった人体の神秘)。

.一級のやり方で二級を戦えるか?

結論からいうと、戦えました。ただし「二級がRCの年なら」という条件つきです。

  • 読み取り→一級と完全に同じ手法でいける。
  • エスキス→RCならだいたい同じ手法でいける。ただし建物規模が小さいので、住宅のエスキス練習をしてスケール感は掴んでおくべき。とはいえ一級でオリ④(模試1)までやっていたので、二級解答例の図面をみながらエスキスしてパターンを脳にインストールするだけでいけた。
    • 全体的に→敷地も建面も狭いので課題文の面積指定を満たそうとすると一級ほどの自由度がない。のでなんか拘束感がある。一級みたいに「エントランスホールで50㎡くらい面積調整するか」ということができない。ガチガチ。
    • スパン割について→一級ならとりあえず7×7mで割ればいっかとなるけど二級は4m、5m、6m、8mが入り乱れてるのでどう割ればいいのか迷う。
    • 外構について→敷地面積が狭いので、一級の感覚でヘリアキ最低2mとか取ろうとすると納まらない。あと駐車場が基本串刺しでドキドキする。一面接道とか車2台とかだと外構の自由度が低いので器を決めやすい。逆に二面接道とか車1台だと一級の感覚ではやりづらかった。
    • ゾーニングについて→一級短期はちびコマゾーニングのあとで1/400でプランニングをするんだけど、二級はちびコマではスパン割だけ決めて1/200でゾーニング兼プランニングをする(ちびコマがチビすぎてゾーニングできない)ので手順に違和感がある。まあそもそも二級は住宅と併用部の二つしか用途がないのでゾーニングもへったくれもないということかもしれない。
  • 製図→ RCならだいたい同じ手法でいける。
    • 作図手順→一級と同じでいける。
    • 作図スピード→一級短期をやっていれば8月中にマスターしてるはずなので問題なし。
    • 作図内容→平面図と断面図は一級と縮尺が違うので、1/100の部材寸法とスケール感は掴んでおくべき。一回解答例を製図すればいける。あと1/100だと建具や家具も描くので、このへんのパーツ練習も必要。テンプレートのどれを使うかとかは覚える。あと断面図の階高と軒高と開口部の寸法も暗記。
パーツ練習したやつ。階段はこのワンパターンしか持ってなかったので防火区画しようにもドアの付け方がわからなかった。
  • 立面図→平面と断面があれば作業なので一回描いておけば十分。
    • 矩計図→これは一級にないので暗記して描けるようにしとかないといけない。屋根と中間階の床と基礎の3面。今年バルコニーが出たから令和4年以降はサッシ廻りの勉強も必要かも。まあそれぞれ3回描けば覚える。
  • 計画の要点→RCなら完全に同じ手法でいける。

つまり、二級の課題が一級と同じRC造ラーメン構造ならやることはだいたい同じだということです。ですので一級製図の勉強だけしていれば戦えました。

これが木造になるとベーシックモジュールも架構の方法も描く図面も違ってくるので、二級専用に学習をする必要があると思います。「ハウスメーカー勤務で木造は得意です!」という方ならともかく、仕事で非木造建築ばかりやっている方にとっては、一級の製図をやりながら二級の木造対策も同時にするのはかなり大変だろうなと思います。

.二級後に一級へ戻ってから困ったこと

  • 描く図面の部材寸法がごっちゃになり訳が分からなくなる(3階建住宅と3階建てビルと4〜7階建てビルでは、柱とか梁とか基礎の部材寸法が違う)。ので一級用に7月から8月にかけて覚えた基礎知識をもう一度復習するはめになる。
  • 描く図面の縮尺がごっちゃになり訳が分からなくなる。一級だけならルーチンでこなせたけれど、二級が入るとそうもいかない。同じ5mm方眼紙の一コマが1/20で100mm、1/100で500mm、1/200で1000mm、1/400で2000mm、1/1000で5000mmになる。私はとにかく算数が苦手で縮尺の換算も苦手なので、入り乱れる異縮尺で試験後二週間くらいは大混乱していました。ヘキサスケール様さまのおかげで乗り越えた。
図面の種類一級二級
エスキスの敷地1/10001/400
同 プランニング1/4001/200
平面図1/2001/100
断面図1/2001/100
立面図なし1/100
部分詳細図なし1/20
計画の要点の住戸プラン1/100なし
一級と二級の設計製図で使う縮尺の一覧
  • 二級の試験は日曜日で、日曜日は私の通学の日でもあるので、一回分授業が受けられない。このため試験翌週は振替授業を受けたり宿題2週分を1週でやったりしてものすごくスケジュールがいっぱいになった。折りしも一級の講義はオリ⑤、オリ⑥という重要な中盤に差し掛かる頃なのでこの時期に余裕がないのはつらかった。

5.まとめ

という具合に、一級専願よりは二級併願だとやることが増えるので大変ではありましたが、やってやれないことはありませんでした。併願するなら二級はRC造の年に受けるのをおすすめします。

なお、ここに書いたのは令和3年のことです。令和3年は東京オリンピックの影響で一級学科の試験が例年より2週早かったため、そのぶん一級製図の授業が例年より2週早く進んでいました。令和4年以降は2週後ろにずれるとなると、二級製図の時期に一級製図の授業は模試1(オリ④)でなくオリ②くらいになるのかも。その場合、エスキスの習得が甘いので、もうちょっとちゃんと二級用にエスキス練習を積んだ方がいいのかもしれません。

以上、令和3年の夏に一級建築士と二級建築士の製図を同時に受験したときの、二級についての思い出でした。

投稿者:

たかは志

建築設備士・一級建築士ブロガーで、サブコンのCADの人です。好きなダクトは給気ダクト。 一級建築士の戦績はR2学科独学74点不合格→2020秋から総合資格に通学→R3学科97点でそのまま製図ストレート合格しました。 ストレングスファインダーのトップ5は学習欲、収集心、責任感、内省、親密性です。よろしくお願いします。